マイプロジェクト(マイプロ)は名前の通り学習者一人一人が私のプロジェクトを創り、実施することを通して学びます。
自己対話とプロジェクトの実践を通して、また、その取り組みを仲間と共にシェアする事を通して、1)学習者の成長と、2)優れた学習コミュニティの創出、3)社会イノベーションの起点となるアクション、その3点を同時に生み出すことができます。

「マイプロ」の概要

学習者は自分自身の心と対話し、自分が本当にしたいこと、感じていることを元にプロジェクトを創りだします。
このフェーズにおいては、プロジェクトの具体性や実現可能性、新奇性などは一切問いません。また、実際には自分自身のことを自分一人で理解することは困難ですし、本当にしたいことは簡単には見つかりません。
マイプロはそのことを前提とし、プロジェクトはいつでも変更可能とします。言いかえるなら、最初に立案したプロジェクトの内容はプロトタイプに過ぎず、その実施(行動)を通した気づきから、自己理解(自己認知・自己覚知)を深め、新しい自己理解をもとにプロジェクトの内容を更新してゆきます。常に進化・変化可能なのがマイプロジェクトです。
マイプロジェクトにおけるプロジェクトは自己理解を深めるための触媒に過ぎず、プロジェクトが当初の計画通り進むことを目的としていません。
プロジェクトの成功よりも、プロジェクトを通して学習者一人一人が自己理解を深め、「本当にしたいこと」を見つける方法論がマイプロジェクトとも言えるでしょう。
極端にいえば、プロジェクト実施というDoingは Beingの理解・深化のための手段にすぎないともいえます。
一人一人が自分の人生に対してオーナーシップを持つことを目的としています。

「マイプロ」の歴史と応用範囲

この手法は慶應義塾大学SFCの井上英之研究会の中で2006年頃に生まれ、今日まで発展を遂げてきました。
2018年現在、マイプロジェクトは、企業研修、社会起業家・地域起業家等の起業支援、大学におけるPBL、中高生のキャリア教育、子育て・介護・看護等の当事者コミュニティにおける自助活動など、様々な文脈・目的において活用されています。
全国で50近い実施団体を持つ手法として普及・発展しています。NPOカタリバによる全国高校生マイプロジェクトアワード は特に有名です。
それぞれ目的に合わせて、具体的なプログラムや重視する要素は異りますが、実施者同士が勉強会を開くなど、基礎的考えを共有しながら実施しています。

このように、マイプロジェクトは、起業家支援やアントレプレナーシップ教育に限らず、個人の成長やキャリアデザイン、コミュニティ創出といったより汎用性のある目的にも使われています。
広く一般に「自分自身の人生を自分自身のものとして主体的に生きようとする」気持ちを呼び起こし、そのことを支援する汎用的なメソッドです。

一般的なプロジェクト実践と何が違うか?

一般的なPDCAの考え方のとおり通常のプロジェクトにおいては、実施(行動)の結果得たフィードバックは、プロジェクトの計画そのものの見直しに100%使われます。
そこに実施者(学習者)の「わたし」、すなわち、原体験や動機・目的意識は問われません。実施(行動)の結果、周囲のアドバイザや市場等から得られるフィードバックを元にプロジェクト自体は精緻化されるますが、その結果として実施者(学習者)の当初の「想い」、すなわち、原体験や動機・目的意識とはかけ離れてしまうことがよく起こります。
特に、起業家支援の文脈においては、この現象は支援の失敗を引き起こします。
また、教育の文脈では、自己と対話せず自己決定せず、Actionするだけの学生を生み、中長期的には学生を幸せにしないケースがあります。

一方、マイプロジェクトでは、自己理解をもとに社会との繋がりを考え、社会に起こしたい変化をプロジェクトとして実施するため、自分軸を持ったプロジェクトとなり、結果的に最短距離で社会イノベーションの起点となるアクションにたどり着きます。また、自己開示を含め、全てのプロセスを学習者間でシェアするため、優れた学習コミュニティがづくり出されます。

ビジネスや社会イノベーションで注目される「マイプロ」

ここまでの説明では、マイプロジェクトは自己満足のプロジェクトしか生み出さないのではないか、という疑問を持つかもしれません。しかし、マイプロジェクトが今日これほどまでに多分野で活用され、支持されている理由は以下の通りです。

経営学では顕在ニーズと潜在ニーズという分類があり、一般的に大きなビジネス、社会に大きなインパクトを与えるビジネスは潜在ニーズの発見・解決を伴うといわれます。前述した「周囲のアドバイザや市場等から得られるフィードバック」は顕在ニーズを扱う場合には重要ですが、今日社会が必要としているような潜在ニーズの発見には別のフレームワークが必要とされています。ビジネスの世界で注目を集めるデザイン思考もそのようなフレームワークと言えるでしょう。複雑化する社会において、従来の分析的手法によるビジネスプランニングには限界があるのです。

マイプロジェクトは、自分自身の中にある原体験や動機・目的意識には、かならず社会に潜んでいる潜在ニーズの破片があるという考えを持っています。自分自身が社会の一部であるため、一人が感じていることは全体である社会の一部を代表しているからです。マイプロジェクトにより自己認知・自己覚知能力が向上することで、社会にイノベーションを起こす潜在ニーズの掘り起こしに繋がります。社会の構成員である一人一人が「わたし」を主語とし、感じていること、あるいはそれらが結晶化された原体験や動機・目的意識が、これからの社会におけるビジネス創出、あるいは社会デザインにおいて重要となります。

このような観点から、マイプロジェクトは特に社会起業、地域起業において活用され、支持されています。

「マイプロ」を体験したい

マイプロジェクトは現在、その姉妹プログラムを入れると全国約50の実施団体があります。このサイトでもご紹介できるよう現在準備中です。

東京にお住まいの方は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構TIP*Sにて行われている「マイプロジェクト道場」があります。これまでに10期100人以上の受講生がいます。
高校生の方は、NPO法人カタリバの全国高校生マイプロジェクトアワードへの応募を検討してみてはいかがでしょうか。

マイプロシートのダウンロード

マイプロを実践するために使うシート類はダウンロードページから無料でダウンロードできます。

詳しくは

井上英之,「イノベーションの第1歩は私と仕事のつながりを取り戻すこと──SVP東京 理事 井上英之さんインタビュー(後編)」, あしたのコミュニティラボ, 2016/02/18

須子 善彦, “オンライン大学において「学習する組織」を実現する挑戦 〜 自分事からはじまるプロジェクト学習手法「マイプロジェクト」の可能性”, BBTU Review 創刊準備号, 2014/04

須子 善彦, “オンライン大学におけるPBLの設計と実践 〜 自分事からはじまるアントレプレナーシップ育成手法「マイプロジェクト」を用いて”, ビジネス・ブレークスルー大学 研究紀要 ビジネス・ブレークスルー大学レビュー(BBTUR) 第4号, 2018/03